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高齢期の所得確保の役割を担う企業年金制度の整備

令和元年10月1日より、確定給付企業年金制度が変更になり、第1退職年金については、「終身」以外に「5年有期・10年有期」を選択できるようになりました。

また、第2退職年金については、繰下げ利息が付利されるようになりました。


終身年金の有期年金化等(令和元年10月1日施行)

就労期間の延伸や公的年金の70歳繰下げ等に呼応した年金制度の変更に加えて、縮小傾向の公的年金を補う高齢期の所得手段として、企業年金は重要な役割を果たすことが期待されており、その持続可能性を高めることも必要となっています。

今般、就労・公的年金・企業年金等を組み合わせることで、「人生100年時代」における高齢期のライフプランを充実させるとともに、企業年金による①高齢期の所得確保と②雇用流動化への対応を見直すことにより、従業員の就労意欲を高め、必要な人材を確保することが重要であると考え、その方策として新たな年金制度の構築を検討していますが、来たる65歳定年や70歳までの就労確保を視野に、まずは再雇用の増加に対応した年金受給開始年齢の繰下げ制度を更に充実させるため、第1退職年金については選択肢を拡大(20年保証終身年金の確定有期年金化)することに加え、60歳以降の繰下げ期間中は第2退職年金に繰下げ利息を付利することで、年金支給開始年齢の繰下げを選択し易い制度に変更しました。


① 第1退職年金(終身年金)の有期年金化

就労期間の延長と合わせて公的年金の繰下げ受給を選択する場合、60歳以上の年金受給権者が企業年金を「つなぎ年金」として活用し、終身支給される公的年金を最大42%増額することで、これまでより長寿リスクに備えることができるため、年金受給者にとってもメリットがあると考えます。

これは、公的年金を補完する私的年金制度(DB、DC)の重要性が増す中、公的年金の年金支給開始時期繰下げ(65歳~70歳支給開始)に対応するとともに、年金受給者の収入を安定させるため、現状の年金・一時金の「後取り」制度(年金の将来分を一時金で受給する制度)を充実させ、受給者個々人のライフスタイルの変化に合わせた使い勝手が良く、ある程度の自主性も担保された魅力ある給付制度に見直していく必要があり、また、最近話題の2,000万円の貯蓄確保問題の解決にも寄与できるものと考えています。

具体的には、第1退職年金(80歳まで保証付き終身年金)を5年・10年の有期年金として受給することにより、総受取年金額が減少することにならないよう保証期間である80歳までの年金額に加えて、80歳以降の終身部分を有期年金で受取れるようにするため、80歳以降の終身部分を加えた「支給開始別終身現価率」を使って算出します。

給付利率2.0%の80歳保証終身年金現価率表(男子直近死亡率)
支給開始年齢 現行年金の原価率 代替年金の原価率
60歳 16.515 20.124
61歳 15.835 19.543
62歳 15.142 18.954
63歳 14.435 18.357
64歳 13.713 17.751
65歳 12.978 17.136

*有期年金額:年金原資÷現行の現価率×代替年金の現価率÷有期年金の現価率

なお、第1退職年金の有期年金選択者(5年又は10年有期年金)が年金受給期間中に一時金を選択した場合については、終身年金選択者が一時金を選択した場合に比べて終身部分が有利な取扱いとならないように、以下の通り補正するものとします。これは、補正しない場合、有期年金選択者の一時金が終身年金選択者の一時金より多くなり、従前の終身年金受給後の一時金選択とバランスが取れないこと、有期年金選択制度の悪用を防止するため、これを補正するための規定を織込みました。

代替年金の一時金額=代替年金×一時金計算用補正率×残存期間別現価率
支給開始年齢 補正率 支給開始年齢 補正率
60歳 0.82066 68歳 0.70039
61歳 0.81026 69歳 0.67659
62歳 0.79888 70歳 0.64967
63歳 0.78635 71歳 0.61910
64歳 0.77252 72歳 0.58416
65歳 0.75735 73歳 0.54398
66歳 0.74040 74歳 0.49745
67歳 0.72156 75歳 0.44350

但し、受給者が死亡した場合に遺族に支払う一時金については、基本年金プラスアルファ部分の代替年金の規約変更と平仄を合わせて確定年金として取扱うこととし、先の選択一時金のような補正を行わないこととします。従って、終身年金を選択して保証期間内に死亡した場合と比べて、有期年金選択者の方が受取る年金及び遺族一時金が多くなりますので、これも有期年金を選択するメリットになります。加えて、現実的には有期年金(5年、10年)を選択して、60歳~75歳までの年金受給中に死亡する方は多くないと考えられますので、基金にとってのコスト負担等のインパクトは大きくありません。


② 第2退職年金に対する「繰下げ利息」の付利

平成29年4月1日付けで、再雇用の増加に対応した年金受給開始年齢の繰下げ制度を創設(第3退職年金の新設)しましたが、給付コストを考慮して受給方法の選択肢のみを拡充するシンプルな制度変更としました。

今般、「人生100年時代」に対応した新たな年金制度の構築を検討するにあたり、第1退職年金については給付利息等を付利しているにも関わらず、第2退職年金については単純に支給開始時期を遅らせる対応のみで、55歳~60歳での据置利息のような付利は行っていなかったため、年金受給開始年齢の繰下げを選択した受給者にとっては、年金受給額の増額等のメリットはあまり享受できていませんでした。

そこで、第2退職年金については、60歳以降の繰下げ期間に応じた利息(20年国債の5年平均値、下限0.5%~上限3.5%で変動)を付利することとします。

なお、足元の20年国債の利回りは0.566%ですが、5年移動平均値は0.827%となっておりますので、65歳まで5年間繰下げした場合は、4.2%ほど第2退職年金の第2仮想個人勘定残高(年金原資)が増えることになりますが、基金サイドにとっては、運用環境にもよりますが5年間の運用収益を獲得することができるため、大きなデメリットはないと考えています。

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