2022年度資産運用
年金資産は、市場で運用され将来の年金給付に備えられます
- 年金給付に必要な財源は、掛金と積立金の長期運用による収益で賄われます。
- 基金では、みなさんから納めていただいた掛金を信託銀行や生命保険会社などを通じて市場で運用し、将来の年金給付に備えることにしています。
- 資産運用では、積立計画上、毎年一定の利回り3.0%(予定利率:2.5%+運用コスト:0.5%)で収益を上げることが前提となっています。実際の運用利回りが予定利率を下回った場合、積立計画に対して年金資産がその分不足します。
- 基金ではより主体的に取り組んでいくために、「年金資産運用の基本方針」に基づいて、資産の構成割合(政策アセットミックス)ならびに運用機関の選定を行っています。これにより、その時々の許容できるリスクと期待できるリターンを勘案しながら、安全で効率的な運用に努めています。
⇒年金資産運用の基本方針
年金資産の積み立てのイメージ
政策アセットミックス
2022年度の運用利回りは▲2.23%(時間加重収益率)となりました
- 2022年度は、年度を通じてマイナス収益という結果となりました。
- 欧米の金利上昇を受けて日本との金利格差が拡大した結果、為替ヘッジコストが上昇した状況が継続しています。基金では外国債券については為替リスクをフルヘッジしているため、この為替ヘッジコストが基金全体の収益を下落させる大きな要因となりました。
- 一方、プラス収益となった運用資産としては株式が若干のプラスとなりました。また、オルタナティブ(低流動性資産)の運用は、+6.5%程度の収益を獲得し、昨年に引き続き安定的に収益を獲得しています。
| 2022年度 | 2021年度 | ||
|---|---|---|---|
| 国内 | 債券(NOMURA-BPI) | -1.65% | -1.22% |
| 株式(TOPIX+配当) | +5.81% | +1.99% | |
| 外国 | 債券(FTSE-WGBI) | -0.50% | +1.96% |
| 株式(MSCI、円換算後) | +2.36% | +22.95% | |
| 運用機関 | 期末資産額 | 委託割合 | 総合収益 | 修正総合利回り |
|---|---|---|---|---|
| 信託銀行 | 33,710 | 44.59 | -352 | -1.04 |
| 生命保険会社 | 1,976 | 2.34 | -24 | -1.21 |
| 投資顧問会社 | 44,890 | 53.08 | -1,482 | -3.23 |
| 合計 | 84,575 | 100.00 | -1,859 | -2.27 |
| グローバル債券・一般勘定 | 国内株式 | 外国株式 | オルタナティブ | マルチアセット |
|---|---|---|---|---|
| 39.7 | 8.4 | 8.0 | 17.1 | 26.8 |
<用語解説>
- 時間加重収益率
- 運用機関の運用能力評価のために、運用期間中の事業主および基金の掛金や給付による資金の増減といったキャッシュ・フローの影響を除いて算出する収益率。算出方法には厳密法のほか、簡便法として内部収益率リンク法に基づく修正ディーツ法、修正BAI法などがある。
- 修正総合利回り
- 年金資産の運用成果の基準の一つ。従来の簿価ベースの平均残高(平残)利回りに時価の概念を導入し、総合利回りよりもさらに時価をベースとした収益率。
分母の平均残高に前期末の未収収益と評価損益を加えることで、時価ベースの収益率に近くなるように修正された利回りの算出方法で、時価ベースの資産価値の変化を把握できる。なお、修正総合利回りはキャッシュ・フローの影響を排除できないため、運用機関の評価には適さない。
■算出式(修正総合利回り)
2022年度の資産運用委員会
- アステラス企業年金基金では、理事長・運用執行理事の他に、選定・互選代議員から各2名の委員と財務部オブザーバーとコンサルティング会社のメンバーを加えて、合計8名で資産運用委員会を開催しています。資産運用委員会では、資産運用に係る方針策定・運用ファンドの選定など、委員会メンバーが議論・検討し、理事会あるいは代議員会での議決を経て企業年金基金の資産運用の方針・対応を決定しています。
- 資産運用委員会では、基金全体の運用状況・資産残高推移、個別ファンドの運用状況などを共有し、マーケット環境分析に基づくポートフォリオ全体の見直しや個別ファンドの運用状況分析に基づく見直しなど、時々の状況を踏まえて対応を決定しています。
- 2022年度は、5月25日、8月24日、11月22日、2月8日の計4回開催しました。
- 商品の新規・解約については、日本株の2ファンドの入れ替えを実施しました。従来のリスク抑制に焦点を当てた2ファンドを解約し、より収益獲得に焦点を当てた2ファンドを新規に採用したものです。またマルチアセットで採用している1ファンドを成績不芳との理由から解約しています。
- 今後の基金全体の運用の方向性について、従来のリスク抑制に焦点を当てた運用を、若干リスクを引き上げて収益獲得を目指すこととしました。具体的な対応は、マーケットの状況を見ながら進めることとしていますが、安定的に収益を獲得しているオルタナティブ(低流動性資産)と株式の運用比率を引き上げることとしています。
- 従前よりリスクを上げることとなりますが、引き続きポートフォリオ全体のリスク水準の低減とリスクコントロールにより、収益の安定化を継続的に推進するという基本方針は従前と変わりありません。
2022年度のスチュワードシップ・コードへの対応状況
- コーポレートガバナンス改革を「形式」から「実質」へ深化させるために、日本版スチュワードシップ・コードが改訂され、原則1で「スチュワード責任を果たすための明確な方針を策定し、これを公表すべき」とされました。また、企業年金基金に対する厚生労働省ガイドラインでは「日本版スチュワードシップ・コードの受け入れや取組みの状況、ESG(環境・社会・ガバナンス)に対する考え方を運用受託機関の選任・評価の際の定性評価項目とすることを検討することが望ましい」とされました。
- アステラス企業年金基金の年金資産運用では、運用受託機関への委託運用のみ実施しており、スチュワードシップ・コードを踏まえた活動は運用受託機関に委ねることとなります。このため、年金基金としては、スチュワードシップ・コードにより求められる各原則に関する基金としての考え方を整理し、コードに基づく活動を運用受託機関に対して求めることとしました。
- 現状、スチュワードシップ・コードの受け入れ表明をしている基金は少数であること。スチュワードシップ・コードの今後の改訂などにより、どの程度基金の体制強化を求められるかなど不透明な点も多いことから、運用受託機関の後押しすることを中心に活動するものの、スチュワードシップ・コードの受け入れ表明自体は当面見送ることとしています。
- 2017年度から、運用受託機関を後押しする活動として、国内株式の運用受託機関のスチュワードシップ・コードに対する取組方針や利益相反への対応、議決権行使の状況などの確認を行い、運用受託機関の活動状況を確認するとともに、継続的な取り組み要請を行っています。
- 国内株式運用受託機関のスチュワードシップ・コード対応状況については、添付資料を参照ください。
⇒添付資料:日本株式運用受託機関のスチュワードシップコードへの対応状況